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Fragmentas Lietuvoje : Verpste

2015.10.23|雑貨

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リトアニア生まれの手仕事と、それに纏わるお話。今日は「エドムンダスさんのベルプステ」に纏わるお話をご紹介します。

【 糸を紡ぐ道具に刻まれた、ロマンティックな物語/エドムンダスさんのベルプステ 】

リトアニアの木工美術品として蒐集されているものにVerpsteがあります。英語に訳すと「Spin」「Spindle」。紡錘のための道具です。かつては男性から女性への贈り物として作られていたこのVerpsteを、今でも作り続けているのがエドムンダスさん。カウナスに住む、ちょっと恥ずかしがり屋な男性です。

古く、リトアニアの木工品の中で独自の進化を見せたのは、織りや紡績、洗濯のための用具類でした。男性が、女性のための贈り物としてそれらを好んで用いたためです。農耕民の多かったリトアニアでは、食事作りや洗濯などの家事、そして織りや紡績といった作業が、女性にとってとても重要な仕事でした。これらが優れているということは、女性としての魅力が高い、ということをきっと意味していたのでしょう。なかでも紡績は刈り取った麻から糸を紡ぎ衣服に仕立てる、またはそれらを売りお金に変える、重要な仕事でした。古い時代では、求婚の際、特にVerpsteを贈ることが一般的な習わしだったそうですが、それはなぜでしょう?

実は、Verpsteに刻まれた小さな太陽、美しい星、花や鳥などのモチーフには、ロマンチックな物語が隠れています。
若者は長い長い冬の夜をかけて、Verpsteにモチーフを刻んでいきます。そして意中の女性へ花束と共に思いを告げる際に、Verpsteを渡したのだそうです。ひと彫りひと彫り「あなたと共に人生を歩みたい」という願いと愛を刻んだ、そのVerpsteを。

 

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かつて糸を紡ぐ際の道具であったVerpsteは、その機能になぞらえて「人生を紡ぐ」ことを意味し、そのVepsteを愛する女性に贈るということは「共に紡ごう、共に生きていこう」という思いを意味していたのです。また一方で、Verpsteに刻まれた幾何学的な模様は、麻の成長を促すものと考えられていました。そのためVerpsteを家に飾り、麻がよく育つようにとの祈りを込めたりもしていたようです。麻農家にとって、麻の成長は常にある願いだったであろうと考えると、Verpsteという美しい道具から、リトアニアの人々が古くから「祈り」と共に暮らしていたことが伺えます。

今年も、エドモンダスさんに100のVerpsteを作ってもらいました。とても美しい紋様のひとつひとつに、エドムンダスさんの思いがこもっています。ご覧頂く際には、ぜひ心に留まるひとつを探してみてください。

*イラストは「ロキシュキス博物館」ウェブサイトよりお借りしました。